グラフェンの類縁体と見なされがちな酸化グラフェンは,大部分の炭素原子に酸素が付加しており,グラフェンとは大きく物性が異なる。たとえば,電気導電性や熱伝導性は非常に低い。また、酸化時に孔が開いたりシートが破れて微細化したりする。さらに,グラフェンに求められるような物性,例えば電気伝導性等を発現するためには、還元しなければならない。それにも関わらず酸化グラフェンが着目されている理由は,量産化しやすいためである。 酸化グラフェンの原料である黒鉛は,1kgあたり数百円で入手できる。安価な黒鉛を用い,酸化プロセスと還元プロセスを最適化することで,グラフェン類を低コストで作製することが実用化の鍵である。酸化グラフェンには大きく分けてBrodie法,Staudenmaier法,Hummers法の3通りの方法がある。作製法により,生じる酸素官能基の量や種類が変わり,酸化グラフェンの物性も変わる。たとえば,金属イオンの吸着量や電気化学的特性はHummers法で作製した酸化グラフェンが優れているが,還元して導電性の高いグラフェンを得るにはBrodie法が優れているといった具合である。